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本物の魅力(堺の刃物)

これまで道具についてあまり意識はしてはきませんでした。未熟な私にはそんなにいい道具は必要ないとも思っていました。
しかし、本当によい道具にふれてみると道具そのものに魅せられます。単なる道具ではなく思いを込めて作られた道具はそれ自体が作品だということに気がつきました。

道具の作り手の思いがこもった魅力的な道具を使って、その上に自らの思いを重ねて魅力的な竹籠が作れたらすてきだなと自然と思えます。

そんな思いを強くしたのも今回、二人の刃物職人の方お話をうかがい、”作品”にふれたからです。
刃物職人というよりも工芸家、芸術家と言った方がいいのかもしれません。作っておられるのは道具ですが、その一つ一つは手作りの一点物です。

道具として使われることが前提のため、機能を追求した刃物はそぎ落とされた美しさがあり、美術品と言っても遜色はない美しさがあります。手にした感触を味わいながら、眺めていたくなります。思いを込めて作られる道具はその一つ一つがまさに、作品なのです。職人さんの語りぶりからも作品に対する思いや、道具としての機能性の追求に感銘しました。

道具として買おうとするととても高価です。でも、作り手が込めた思いと手間、脈々と伝えられてきた技術から生み出される”作品”は、決して高いものではないと思いました。

でも、悲しいことに日本では道具は軽く見られてしまいます。ハサミなら切れればよい、切れなくなったら買い換える。機能と効率そしてコスト。それが評価されています。しかし、何かが間違っているように思います。丁寧に作られた道具を丁寧に扱い別の物を生み出す。そして道具を大切に扱う。野球選手のイチローがグラブなどを日々入念に手入れを行い見事なプレーをしているように。その価値を多くの人が共有できればこのすばらしい伝統の技術を継承できるのにと思いました。

水野鍛錬所
http://www.mizunotanrenjo.jp/index_j.html

Hamono120317_1 昭和の法隆寺の五重の塔の解体修理の際に鍛冶屋として参加されたそうで、解体修理ででた釘を使って新たに釘を作ったり、法隆寺の塔の上に雷よけのまじないに掲げられた大きな鎌を作ったりとした歴史ある鍛冶屋だそうです。住吉大社の鍛冶を受け持つとのことでした。刀鍛冶で、今でも日本刀を作ってるそうです。その技術を生かし包丁やはさみなど作っておられます。

若い跡継ぎの方がおられて作業を色々と教えていただきました。おもしろかったのは刀にまつわる言葉が日常的な言葉として残っているということでした。
また、刃物で大切な焼き入れとは熱した鉄を水に冷やすことにより炭素量をコントロールして強度を出すためのものと言うことでした。勉強になりました。

売られているはさみや包丁は、道具なので機能や性能を追求したものであるのですが、そればかりではなくデザイン性を追求された切り出しも作っておられました。すてきな文鎮も桐の箱に入ったセットがあり、プレゼントにするとすてきだなと思いました。

Hamono120317_2 いいはさみがあれば買おうと思っていた私は、手に取って動かしてみて、はさみの感触に惚れ込み買いました。思っていたよりも手頃な価格でした。これもホームセンターで売っているものと比べるととても高価です。でもそれは、物が切れればいいという機能だけではなく、そのはさみを作ったかたのこだわりや工夫もまとめて買ったのだと思います。いわゆる”物語”を一緒に買ったのです。これは値打ちがあります。


佐助
http://sasuke.lolipop.jp/index2.html

Hamono120317_5 創業は江戸時代までさかのぼり江戸末期に鉄砲製造の技術を生かして鋏製造を始めたのが初代の佐助とのこと。店先に置かれている包丁やはさみの値段はびっくりする価格がついています。簡単には手がでません。「切れればいい」と思っている人には法外な値段に映ります。

でも、店主の方の話を聞き、実際に手に取ってみると、この価格は決して高くない品物であるということがわかりました。

Hamono120317_4 作業場は家の中のあちこちに様々な工作機械がならび、最初から最後の行程までを一人で作っておられます。しかも驚くのは注文を受けてからできあがるまでの長さです。はさみの仕上げ方法により風格をつけるため「さび付け」という作業があります。わざとさびさせるのです。現在では薬をつけて行ったりするらしいのですが、佐助では3年間軒先に吊し自然にさびさせるのです。こちらのほうがまんべんなく全体にさびがまわるとのことです。つまり、注文されて手に入るのは3年後になるのです。

Hamono120317_3 さらに、びっくりしたのは、はさみの柄に溝を切り金や銀で細工をする象嵌をされるのです。また、はさみの柄に漆を塗って仕上げるものもあるのです。(写真右側)
この象嵌で作られる椿の模様がとてもかわいくて魅力的なのです。そして、実際にそのはさみを手にとってチョキチョキと動かすとこの感触がとても心地よいのです。ずっと手にとって動かしていたい誘惑にかられます。魅せられるというのでしょうか。本当に欲しいと思いました。

でもこれは約38万円(写真右。ちなみに左はその3倍。共に特注品)。気軽に買える値段ではありません。でも、作られる行程を思うと、それは決して高い価格ではないということが納得できました。もうこれは、道具の域を越えてまさにアートです。5月にはベルサイユ市で個展をされるとのこと。日本では軽んじられる伝統的なものの美しさは昔も今も海外の人に見いだされるということでしょうか。

私の技術が佐助の道具に見合うようになったときに買おうと心に決めました。

残念ながら、こちらのお店には跡継ぎの方がおられませんでした。息子さんも別の仕事をされるとのこと。すばらしい技術が誰かに継承されることを祈っております。

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