唐招提寺をたずねて
ドライブをかねて奈良の唐招提寺を訪ねました。
奈良のお寺は京都とは違い、どこか寂れたという感じがして、そこが魅力でもあります。いわゆる平安以降の日本文化というよりもどこかまだ大陸文化の香りがする仏像や建物などが現存している魅力です。
薬師寺は、再建されており、創建当時の鮮やかな寺院を見ることができます。それもおもしろかったのですが、唐招提寺はまた違った趣がありました。
まず、他の寺院と大きく違いを感じたのは、大きな木々が育つ林の中にあるということです。特に大きな松がたくさんありました。まるで鎮守の森と言った感じです。このような寺院はあまりないのではないでしょうか。森の中に建物が点在しているという感じなのです。
奈良時代からの松があるとは思えませんが、それでもこれだけの大木がたくさんあるという事は、それなりの歴史がなせるわざということでしょうか。
ち
ょうど萩の花が終盤を迎えている季節でした。散策していると、木漏れ日がとても綺麗でした。
鑑真の座像の複製が安置されている開山堂の前には、松尾芭蕉の句碑がありました。「青葉して御目の雫拭はばや」。御目の雫とは、日本に渡れた喜びの涙でしょうか。それとも、故郷を思う涙でしょうか。いずれにしても鑑真の苦難に思いを馳せた句なのでしょう。
この場所かどうかはわかりませんが、確かに芭蕉はこの寺の境内に立って鑑真に思いを馳せたのです。時間と空間は違うものの確かに芭蕉が立っていたのです。そう思うと、私の意識は時空を越えて芭蕉を探しています。
鑑真の墓がある廟があるというので行ってみました。土と瓦で積まれた昔ながらの土塀に沿って進むと、小さな門がありました。聖域への門です。
この門の前に立ち中を見ると、思わず感嘆の声が口をついて出ました。
久しぶりに心の底から「うわぁ」っという感嘆詞が涌いてきました。
一本の小道が廟まで一直線で続いており、その脇には高い木立。そして、木立の地面には美しいこけが一面に広がっているのです。もわもわとした苔が、道の両側一面に絨毯のように広がっているのです。一面のモスグリーン。その上に午後の木漏れ日が落ちているのです。
土塀の外からは、その光景が想像できなかったのです。とても美しい光景でした。
ゆっくりと時間を過ごすにはとてもいい空間でしたが、境内には水辺が多いので、ものすごく蚊が多いのだけが困りました。
売店では、香りのよい線香がたかれていました。その脇に、関連本が並んでいました。気になった本を手に取り求めました。
帰って、その本のページを開くと、日々、線香を焚きしめられていたためかとてもよい香りがしました。
その香りととも落ち伝い寺の様子を思い浮かべました。とても素敵な場所でした。また、訪れて見たい場所が増えました。
(2014.09.23)
| 固定リンク
コメント