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竹の魅力(10年を振り返って)2

前回は、竹籠作りを始める時に考えていたことなどを振り返りました。きっかけは身近にある竹を使って活用する安上がりな趣味にしようとする単純な動機でした。しかし、色々と考えていくと様々な事を感じるようになってきました。
今回は”竹の声”についてです。

竹籠に自然を感じると言うこと

堺市であった前田竹房斎展に行ったときに、誰もいない展示室で、私にあるイメージが降りてきました。「悟り」いって良いのかもしれません。そのイメージは私の心と共鳴し、心が揺さぶられました。言葉ではうまく伝えられないのですが、このようなものでした。

竹を節を残して切ると器として花を生けることができます。つまり、”底のある筒”なのです。それでは竹籠は何か。それは竹をヒゴという形に分解しさらにそれを竹工芸家のイメージと技術により姿をかえて”底のある筒”に再構築された物なのです。

そして、それは竹林に生える竹のように天に向かって立っているのです。展覧会場に並べられたいくつもの竹籠は作家により命を吹き込まれ、姿を変えた竹なのです。私は展覧会場で竹林に立っていたのです。私には竹林に立ち風にざわめく笹の音さえも聞こえてきたのです。

それ以来、凜と立つ優れた竹籠を見ると竹の生命力を感じるのです。竹籠を通して自然を感じるのです。部屋に竹籠を置けばそこが竹林に・・・つまりは自然を呼び込むことになるのではないかと感じているのです。そんな生きた竹籠が作ってみたいと思いました。

また、美術工芸ではなく実用品としての機能性を追求された宮崎県の籠職人の廣島さんの作品には、無駄をそぎ落としたような機能美が感じられます。この籠を見ても籠の背後には自然に生えている竹と同じ姿をしているのです。

私は、竹は作り手により竹籠に形を変えられてもなお、作家の気持ちを受け止め、竹籠に姿を変えようとも竹としての姿をとどめている存在感に魅了されています。
もしかしたら、これは竹に神秘性を感じてきた古代の人の感性に通じているのかもしれません。

竹を割ること・・・竹の声を聞くという事

特に近代の工業が発達してからの欧米の思想が日本に入ってからの事でしょうが、自然界は人間が支配するものであるという意識が強くなり、農畜産物など人間が必要な物について「自然からの恵みを分けてもらっている」などという謙虚な心が失われてきました。

しかし、手で物を作る事を極めた人たちが最終的にたどり着くのはその材料に対する謙虚な気持ちです。

竹もやはり主張をしています。その声を聞かなければ、あのしなやかで美しいヒゴはできません。自らの意に沿わなければ抵抗もするのです。
竹の声を聞かずに、強引にわったりするとささくれができ、手に突き刺さります。また、ナイフのように鋭利な角で手を切ることもあります。

「竹は鉈で割るのか。竹が割れるのか。君が竹を割るのか。…それを意識しないでやるならやめた方がいい。」
「鉈はきっかけにすぎない。竹が割れていくのを助けているだけ、無理に割ろうとすると、竹が言うことを聞かず、ケガをする。」

これらは私が、本やテレビなどから過去に拾い書きしたヒゴを作るときの「極めた人」の言葉です。竹を実際に割って作るようになってから、実感します。強引に力を込めて割ってもうまくいかず、先生の様子を見ていると力を込めてやっているというわけでもないのです。

宮崎県の籠職人の廣島さんは生前に竹についての思いをいくつも残されています。その中に「いつも竹のなりたい形を考えている。俺の気持ちで・・・・ じゃいかん。竹の気持ちでやらんと」いうものがあります。割るときだけではなく、形作るときにも竹の声を聞く必要があるということです。

その声を聞くという謙虚な物事を意識が極めると見えてくる真実なのかもしれません。

竹は主張をしているのです。しなやかさと美しさを持ちながら意に反したことをされると反発する意思の強さを持っているのです。その声を聞いて作り手が形にしたからこそ、籠から自然の中にある竹をイメージし「自然」を感じる籠が生まれるということなのでしょう。作り手がねじ伏せて作ると、見た目には竹籠ですが、魂がこもらず単なる籠にしかならないのだと思います。

私にはまだ、竹の声が聞こえません。だから、私の技量で作る籠では竹が泣いているかもしれません。いつかは竹が胸を張りその存在感を主張するような籠を作りたいなと今改めて思います。

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