« 休日の昼食は他人丼 | トップページ | 4月から大学生 »

映画「ひまわり」を見て

イタリア映画の「ひまわり」を見ました。有名な映画ですが、実際に見たのは初めてでした。オープニングで流れる切ない音楽、そして画面一杯に広がるひまわりの映像がとても印象的です。

戦争によって翻弄される若い二人の運命。淡々と二人の愛を描きながら、その背後に戦争の非情さを静かに物語っています。

結婚直後に夫は、ロシア戦線に兵士として送られます。戦争が終わっても戻ってこない夫の消息を訪ね役所や駅に足を運ぶ日々。そんな中で夫と同じ部 隊にいたという兵士に出会います。そして最後に雪原に倒れた夫の様子を聞くのです。しかし、死んだということが信じられない妻は夫を探しにロシアに旅立ち ます。その旅で平原に広がるひまわり畑を目にします。このひまわり畑の地でも多くの兵士が死んだことを知ります。そして丘の上に広がる無数の十字架の光 景。しかし、妻は夫の無事を信じ、やがて夫にたどり着きます。ところが夫はロシアで結婚して子供がいたのです。ショックを受けてイタリアに帰った妻はやが て新しい生活を始める。そして夫は・・・というようなあらすじです。

私はタイトルとなっている「ひまわり」にどのような意味が込められ ているのかをずっと考えていました。ひまわりの映像はオープニングと妻がロシアの大地で多くの兵士が死んだことを知る直前に出てきます。ここで、オープニ ングの映像がロシアの大地であることがわかるのです。

この、ひまわり畑のシーンはちょうど物語の転換点でした。多くの兵士が眠るという平原。その直後にシーンにある十字架の群。ひまわりは大地で死んでいった兵士達の墓標のメタファーなのだと思いました。

そ して、この物語に随所に見て取ることのできる明暗のシンボルでもあるのです。明るいひまわりの花の群の下に眠る兵士という明暗。平原で命を落としたはずの 夫が生きていたという明暗。そして、そのことを知って味わう妻の明暗など、ひまわりのシーンの後、たくさんの明暗が積み重ねられて物語が紡ぎ出されていく のです。その明暗が登場人物達の苦悩を際立たせるのです。

イタリアの妻と再会した後の夫の沈んだ様子にロシアの妻は夫に「私を愛していないの」という言葉を投げかけます。苦悩は続くのです。

ロシアの妻はがいなければ、夫は、ロシアの地で本当は死んでいたのです。イタリアの妻からすればロシアの妻は夫を奪ったととることもできますが、彼女がいなければ夫と話をすることさえできなかったのです。つまり、イタリアの妻からすれば夫は会えるはずのない人なのです。

夫にとっては取り残された異国の地で頼れるのはやはり、助けられたロシアの妻しかいません。助けられて結婚し家庭を持つ。生き残るにはその道しかなかったのです。それも真実です。

一方、イタリアの妻は夫が裏切ったと見て憎みやがて、別の男と結婚していました。それも仕方ないことでしょう。夫の愛を信じ生存を信じることをいきる力にしていた妻が夫の裏切りを憎むというのも真実です。

夫 はイタリアで彼女と再会し、これまでのことを話します。やがて妻も夫への気持ちが消えてしまった訳ではないことを知るのです。夫は一緒に現実から逃げ過去 に置き忘れた生活を新たに取り戻そうとします。しかし、そうはできない事情があり結局は別れます。辛い別れ。駅での離別のシーンは無言ではありますが、二 人の様子は見るものの心をも引き裂きます。
帰ることを信じて、兵士としてロシアに向かう夫を見送った駅で、永遠の別れを心に見送る妻、そして列車の中で硬い表情でたたずむ夫。運命の残酷さを感じずにはいられません。

これは、悲劇なのか・・・。一緒に見ていた妻は問います。
間違いなくこれは戦争が生んだ悲劇です。でも私は、このエンディングは悲劇の中ではあるけれど、ある意味ハッピーエンドでもあったと思うのです。
夫とイタリアの妻が、すべての現実を逃れ新しい生活を選択したらドラマチックではあるけれど、悲劇です。ロシアでは命の恩人でイタリアへ帰ることを許してくれた心優しい妻と娘、そして、イタリアの妻の新しい家族にとっての悲劇となるのです。

二 人の選択はとても賢明であり現実的な結末でした。悲しい別離とはなったものの、お互いの気持ちを話した後、それまでの心のわだかまりを解消したはずです。 夫はロシアに送られる前に約束した毛皮のマフラーを手にイタリアに帰ってきたのです。多くは語られませんが、夫の妻に対する想いは痛いくらいに伝わってき ます。過ぎ去った時の流れは、二人を引き戻しようができない場所へと押し流してしまったのです。
しかし、この悲しい別れにより二人の間にあった わだかまりは涙とともに洗い流せたと思うのです。そして夫と妻はそれぞれの場所で心の痛みを抱えながらも、それぞれの居場所で幸せに暮らしたと思います。 二人の周りの誰もが悲しむことはなかったです。ただ、戦争によって引き裂かれた夫婦に悲劇の傷跡だけを残して。

この映画で「ひまわり」とは何を意味するのか・・・。それは、物語の中心である二人の愛の明暗と、二人の愛の結末の墓標としてのメタファーではないかと思うのです。

|

« 休日の昼食は他人丼 | トップページ | 4月から大学生 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/41440/61213098

この記事へのトラックバック一覧です: 映画「ひまわり」を見て :

« 休日の昼食は他人丼 | トップページ | 4月から大学生 »