10年ほど前の事になりますが、私は職場の友人と共に東北旅行に行きました。最終日に、友人と別れて一人で宮沢賢治を身近に感じようと自転車でゆかりの地を巡りました。その時の紀行文が残っていました。(当時、自分のHPに掲載していました。)今読むと、表現に甘いところがありましたので、ちょっと加筆訂正しました。
写真も手元に無かったので、参考になるサイトにリンクをつけました。
では、よろしければ読んでやって下さい。
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1996年9月に私は友人と東北に旅行をしました。この年は宮沢賢治生誕100年ということで、花巻では「賢治百年祭」というイベントが開かれていました。私たちはイベントの混雑を避けるためにわざわざイベントが終了した日に花巻にはいりました。
以下のレポートは、私が賢治の心を感じるために花巻市内を散策した時のものです。
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賢治の心を探す旅
9月にはいり、遅い夏休みをとって東北へ旅行に行きました。京都から寝台特急で青森まで行き、そこから花巻をめざしレンタカーで回るという旅でした。東北のあちこちを回り、岩手に入ったのは3日目のことでした。
小岩井農場では、家族連れの多い公園のようになったところはパスして、牛舎などを見学し、資料館で展示されていた宮沢賢治と小岩井農場に関しての資料を見ました。また、盛岡市内にある賢治の童話集を出版社である光原社の跡地も立ち寄りました。周辺の通りは賢治の銅像などが建ち並んでいました。
その翌日は賢治とは離れて、遠野へ民話の世界を感じようとあちこち行きました。カッパ淵にも行きました。でも、あいにくの雨で行きたいところを回ることはできませんでした。姥捨て山といわれたデンデラノや早池峰山は自動車から見ただけとなりました。
しかし、「銀河鉄道の夜」のモデルとなったという、岩手軽便鉄道・・・現在のJR釜石線はチェックしました。所々に当時の面影を残すアーチ橋があります。この鉄道を賢治は好きだったんだろうなと当時に思いをはせました。
そして、最終目的地の花巻に到着しました。
最終日は昨日までの雨が嘘のように、気持ち良く晴れ渡りました。雨が上あがって助かりました。レンタカーの契約が前日できれているため、この日はレンタサイクルを交通の手段にしようと思っていたからです。
前日で賢治百年祭の終わった直後の花巻はあちこちに駐車場の跡があったりして、どこか祭の後の静けさというものを感じました。しかし、これでこそ、本当の賢治の心が探せるというものです。わざとイベントをはずしてきたかいがります。
とりえず、宮沢賢治記念館へ行きました。ユースホステルを利用していて、バス停まで送ってもらったのはいいけど、そこから記念館への坂道を歩いて登るのは結構きつかったです。
記念館でゆっくりと資料を見学し、物販コーナーで有名な「雨にも負けず」の詩を書いた巻物を購入しました。
その後、花巻駅へタクシーで移動し、花巻駅前で自転車を借りました。駅前の観光案内所からこの貸し自転車の店までの間には、岩手軽便鉄道跡と記された支柱がありました。「シグナルとシグナレス」というシグナルの恋の物語があります。その物語の舞台はまさにここなのでした。在りし日の軽便鉄道の駅を連想しました。小さな鉄道と、立派な鉄道。七戸で乗ってみた「南部縦貫鉄道」と重ねあわせてイメージしていました。
今回の旅行で行きたかったのは主に3箇所「羅須地人協会」のあった場所に立てられた宮沢賢治詩碑、イギリス海岸、そして花巻農高にある羅須地人協会(賢治の家)です。
取り敢えず、イギリス海岸に自転車を走らせることにしました。
昨日の雨で増水して、海岸らしくはありませんでした。しかし、ここで賢治が泳いだり、クルミの化石を発見したのだと思いつつ、光景を心にきざみました。きっと、この空気や景色ののどこかに、賢治の感性を培った物があるはず。そんなことを思いつつ、ぼーっと山や川を眺める私の後ろでは、賢治祭の時の客目当てに立てられた海の家のような売店が解体され始めていました。
イギリス海岸から堤防づたいに自転車をすすめ、桜町にある宮沢賢治詩碑へと行きました。
私は、長い時間この詩碑のある小高い丘から見える山や田んぼなどを眺めていました。詩碑の辺りは静かで、たまに幾つかのグループが訪れては去って行きます。
賢治の時代から時は流れ、ここから見える光景は、賢治の見た物とはきっと変わってるでしょう。でも、大地や空、自然は当時のままにあり、賢治もここから同じように見、自然を感じ、田畑の事を思っていたに違いないそういう思いで眺めていました。 ふと見ると、詩碑とは別にもう一つ言葉が書かれたものが立てられていました。
「われらに要るものは銀河を包む透明な意志、巨大な力と熱である」
私は、詩碑に書かれた「雨にも負けず・・・」も好きですが、こちらの言葉が心に訴えてくる物がありました。百姓を思っていた賢治の力強いエネルギーを感じ取れるからです。心の底から力が湧いてきました。おそらく、ここで賢治が若い百姓に向かい、夢と希望を語りきかせた心の奥底にあった想いではないでしょうか。
詩碑には賢治の遺骨が納められていると案内板にありました。私はそっと詩碑に向かい手を合わせました。
賢治の自耕の地があるというので、行ってみました。「下ノ畑」のことです。実はここもぜひとも訪れたかった場所なのです。おそらく現在では耕地整理がされているでしょうから、「賢治自耕の地」と書かれた杭のある田が本当にそうなのかわかりません。しかし、この当りで賢治が鍬をふるっていたというのは事実なのです。
ここで鍬をふるい種を蒔いた賢治は何を思ったのでしょうか。もしかしたら、ここで童話や詩を思いついてメモをとっていたかも知れない。そんなことを思いつつ、私は自転車のサドルにカメラを置き、セフルタイマーで、この杭をともに写真をとりました。
近くの田にあったトタン葺きのポンプ小屋に、日に焼けて黒くすんだ合板が立てかけてありました。よく見ると「賢治が稲作指導した当時の奥羽132号」とそこには書かれてありました。見るとその田には、稲刈りには2週間ほど早い稲穂が頭を垂れていました。この看板はこの田の事を言ってるのだろうか。果たして、ここに植わっている稲がその「奥羽132号」なのだろうか?でも、きっとそうに違いないと思うことにしました。
私は田んぼの中に立ち、稲穂の稔具合を確かめる賢治の幻を見ました。
もときた堤防をイギリス海岸の方へ向かいました。ちょうど正午をすぎでした。売店の解体作業は進み、午前中にはあった屋根がほとんど片づけられていました。
イギリス海岸には、別行動をしていた連れに会いました。
その友人は昼食に弁当を食べていました。私は友人が持っていた菓子を少し分けてもらい、休憩をしました。その後、花巻農業高校に移築され保存されている、羅須地人協会へむけてまたペダルをこぎ出しました。
岩手の空は胸のすくほど青く拡がり、風が心地よく私を包み込みました。大地に広がる稲穂の波も大きく黄金色拡がっていました。私はその中を気持ちよくペダルをこぎ続けました。
花巻農業高校の門を入ると、OBの人の思いがきざまれた碑と、宮沢賢治詩碑の前で見た「われらに・・・」という賢治の言葉がきざまれた碑がありました。
羅須地人協会・・・賢治の住んだ家は、花巻農業高校の敷地に公園のように綺麗に整備された庭の中にその建物はひっそりと建っていました。この建物は本当に偶然にして保存されていたようです。よくぞ残っていたと思います。
建物に入って、ここで賢治が自ら百姓をめざし、百姓を教育し、理想をめざしていた姿を思い、ここで、いくつもの作品が産み出されたという事実にかみしめました。そして、そのイメージの中に自分を置き、賢治と空間を共有していることを感じました。「ああ、実際に私も賢治の教えを受けたかった。」そう思いました。
羅須地人協会を後にし、イギリス海岸へもう一度行ってみました。
売店もほとんど解体され、床も片付けられていました。堤防にあがってみると、連れは気持ちよさそうに昼寝をしていました。
日は西に傾き、私の賢治の心を探す旅も残りわずかとなりました。
帰りは大阪国際空港行きの飛行機ということになっていました。空港で土産物を買いました。何でも宮澤賢治でした。売店のおばちゃんが「なんでも賢治ばかり、びっくりしてることやろう」などと言っていました。とはいうものの、私はここで賢治Tシャツを購入しました。
飛行機の座席は窓際になりました。暗くなってからの便ですので、外は見えないだろうと思っていました。
飛行機が離陸し高度をあげて行くとき、ふと窓の外を見ました。花巻の夜景がそこには広がっていました。これは、まさに銀河鉄道。賢治が生きていてこの光景をみたらどう思うだろう。そんなことを考えました。
もしかしたら、あの話を書く時にこのような光景を時間を越えて見ていたのかもしれません。
やがて、大阪上空にきたときの驚嘆もわすれられません。まさに、銀河の宝石をそのまま落としたような明るさでした。しかし、その明るさの中に広がる世界は、自然をつつむ、賢治の心とは全く異なる世界であることを思うと悲しくなりました。
参考リンク------------------
盛岡白百合学園(宮沢賢治ワンダーランド)
賢治ゆかりの地の写真が沢山掲載されています。私の紀行文中でリンクさせてもらったものの他にも沢山掲載されています。
あざりあ ~宮沢賢治の部屋~
宮沢賢治のファンの方のHP。紀行文中でリンクさせてもらいました。
リンク集も参考にしてください。
花巻市(宮沢賢治のコーナー)
地図などありますので、私が自転車で回った場所の位置関係などを参考に見て下さい。
宮沢賢治の作品をすぐに読むならここにアクセス!!---------
森羅万象サービス
青空文庫
青空文庫の宮沢賢治の作品への直接リンクは次のところです。
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person81.html#sakuhin_list_1
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